年金記録問題に関する会計検査の結果についての報告書
(要旨)
平
成
2
1
年
1
0
月
1 検査の背景及び実施状況
( 1) 検査の要請の内容
会計検査院は、平成20年6月9日、参議院から、国会法第105条の規定に基づき下記事
項について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対
し同月10日検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施して
その検査の結果を報告することを決定した。
一、会計検査及びその結果の報告を求める事項
( 一) 検査の対象
厚生労働省
( 二) 検査の内容
年金記録問題についての次の各事項
① 年金記録問題発生の経緯、現状等
② 年金記録問題への対応に係る契約の内容、予定価格の算定、履行及び
その確認等の状況
③ 年金記録問題の再発防止に向けた体制整備の状況
( 2) 公的年金制度の概要
我が国の公的年金制度は、昭和61年4月から、国民年金を全国民共通の基礎年金とし
て支給して、厚生年金保険や共済年金は報酬比例の年金を支給する「基礎年金の上乗
せ」と位置付けて再編成した基礎年金制度が導入された。
( 3) 基礎年金番号の導入
基礎年金番号の導入前においては、厚生年金保険、国民年金等の年金記録(記号番
号、氏名、性別、生年月日等の記録)はこれら各制度の保険者ごとに年金手帳等の記
号番号(以下「手帳番号」という。)により管理されていた。このため、複数の手帳番
号保有者については、年金の裁定(年金を受給する資格ができたときに必要となる手
続をいう。以下同じ。)の際に、手帳番号ごとに年金記録を確認する必要があったこと
から、年金記録を正確に把握するなどのため、平成9年1月に基礎年金番号が導入され
た。
社会保険オンラインシステム(以下「オンラインシステム」という。)において管理
されていた年金記録は、9年1月時点で約3億件存在していたと推定されている。このう
ち基礎年金番号が付番されたものは約1億0156万件であり、残りの約2億件は、一人の
各制度ごとの手帳番号により管理されている状態となっていた。
( 4) 検査の観点、着眼点、対象及び方法
本院は、参議院から検査要請のあった前記( 1) ①から③までの各事項について、合規
性、経済性、効率性、有効性等の観点から、次の点に着眼して検査を実施した。
① 年金記録問題が発生した経緯はどのようなものか、9年1月以降の基礎年金番号へ
の統合及び統合後の事務処理等は、適正かつ迅速に実施されているか。
② 年金記録問題への対応に係る契約は、その内容、予定価格の算定、履行及びその
確認等が会計法令等に基づき適切に実施されているか、また、経済的、効率的なも
のとなっているか。
③ 年金記録問題の再発防止に向けた体制整備は適切に実施されているか。
本院は、厚生労働本省、社会保険庁、社会保険業務センター及び43社会保険事務局
(管内の社会保険事務所等を含む。)において、18年度から20年度までの間に計420.
4人日を要して会計実地検査を行った。検査に当たっては、各種帳票等関係書類の内容
を精査するとともに、担当者から説明を聴取した。また、社会保険庁に対して事業実
績等に係る調書の作成を依頼し、在庁して、その内容を分析するとともに、同庁から
証拠書類として提出されている契約書等関係書類を検査した。
2 検査の結果及び検査の結果に対する所見
( 1) 年金記録問題発生の経緯、現状等
ア 基礎年金番号に統合されずに管理されている約5095万件の年金記録
基礎年金番号に統合されていない年金記録は、9年1月時点で約2億件あるとされて
いたが、18年6月時点でも依然として約5095万件ある状況となっていた。
( ア) 年金記録の補正作業及び名寄せの実施状況
a 上記の約5095万件の年金記録について、オンラインシステム上で基礎年金番
号の年金記録との名寄せを実施するに当たり、氏名、生年月日又は性別が収録
されてない年金記録が約524万件存在していたことから、社会保険庁は、当該年
金記録について払出簿等を確認の上、氏名等の補正作業を実施した。しかし、
払出簿等に氏名等の記載が無いなど補正作業が困難なものが、21年2月現在で2
6, 354件存在している状況である。
上記約524万件の補正作業後、社会保険庁は、20年3月までに、すべての年金
番号に結び付く可能性のある未統合記録は約1172万件であった。
b 社会保険庁は、昭和54年以降、厚生年金保険の年金記録をカナ氏名で収録し
た際、本人への確認ができない資格喪失被保険者については、「漢字カナ変換辞
書」を使用してカナ氏名を収録した。このため、正しい読み方と異なるカナ氏
名が収録されているものがあり、名寄せができない状況となっていた。そこで、
同庁は、これに係る約154万件の年金記録を対象として、払出簿等を確認し漢字
氏名を収録する補正作業を実施して、名寄せを実施した。このうち、補正作業
が完了していないものは平成20年5月現在、計3, 330件あった。社会保険庁は、
これらの中には補正困難なものがあるとしている。
したがって、社会保険庁は、上記a、bの補正困難なものについては、22年
度以降に運用が開始される年金情報総合管理・照合システム等を有効に活用す
ることにより、正しい氏名等に補正を行うなどして早急に解明する必要がある。
( イ) ねんきん特別便等の実施状況
a 社会保険庁は、すべての年金受給者及び被保険者等約1億0873万人に年金記録
を確認してもらうため、ねんきん特別便を20年10月末までに190億9372万余円の
経費をかけて発送している。
( a) 上記のうち、①住所不明により返送されたものがあり、社会保険庁は住所
の変更について再確認するなどした上で、約79万件を1億8466万余円で再発送
している。②ねんきん特別便の作成及び発送準備業務に係る委託契約におい
て委託業者への指示等が適切でなかったなどのため、予定どおり発送対象者
に到達せず、社会保険庁がその費用を負担して再発送した事態が約51万件、
計3301万余円見受けられるなどしている。
このように、ねんきん特別便の作成及び発送のための費用は多額となって
おり、その作成及び発送について誤りがあれば、再発送の費用を要すること
になる。
したがって、今後は、ねんきん定期便が毎年度相当数発送されることから、
社会保険庁は、ねんきん定期便についても再発送の事態を避けるため、慎重
にその作成及び発送を行う必要がある。
( b) ねんきん特別便の未回答者数は、21年5月末現在で約3119万人存在している。
れた年金受給者のうち約40万人が未回答者である。そこで、社会保険庁は、
上記年金受給者のほか、「訂正無し」と回答した者で基礎年金番号に結び付く
可能性のある記録があるとされた計約87万人について、電話や戸別訪問によ
るフォローアップ照会を実施してきている。その結果、本人と連絡が取れな
い者又は回答拒否者が21年5月末現在で37, 340人となっており、その実施の進
ちょくに伴い増加する傾向にある。
年金記録問題の解決に当たり、ねんきん特別便の発送は、被保険者等の本
人に年金記録を確認してもらうための有効な手段の一つであるが、ねんきん
特別便が被保険者等に到達しないとこの確認をしてもらうことができない。
したがって、社会保険庁は、本人に年金記録を確認してもらうために必要
となる様々なアプローチの方法を検討してこれを実施する必要がある。また、
ねんきん特別便の未回答者に対しては、今後毎年発送することとなるねんき
ん定期便においてその回答を促すなどあらゆる機会を捉えて働きかけを行う
必要がある。
また、上記のとおり、フォローアップ照会において、本人と連絡が取れな
い者又は回答拒否者の数が増加する傾向にあり、未統合記録が本人のもので
あるか否かを確認するというフォローアップ照会の目的が十分達せられてい
ない状況となっている。したがって、社会保険庁は、今後もこれらの者に対
する照会を継続的に実施していく必要がある。
b 社会保険庁は、被保険者等の個人が、インターネットにより年金加入記録の
照会を行えるサービスを18年3月から実施している。
この照会サービスは、年金受給者及び被保険者等が自己の年金記録をいつで
も閲覧できるように構築したシステムであり、年金記録の正確性に資すること
ができるものであると認められる。したがって、社会保険庁は、このシステム
を十分に活用するための方策を講ずる必要がある。
( ウ) 年金記録の基礎年金番号への統合及び記録の訂正・回復状況
社会保険庁は、約5095万件の年金記録については、年金記録相談の実施、ねん
きん特別便の発送等により、18年6月から21年3月までの間に約1010万件が基礎年
金番号に統合されたとしている(図参照)。一方、今後解明を進める約1162万件に
どの各種解明作業を行った上で、最終的にはインターネット上での公示等により
解明・統合を進めることを検討するとしている。
したがって、社会保険庁は、インターネット上での公示等を含め、解明・統合
作業を早期に終結させるのための方策を検討する必要がある。
図 未統合年金記録( 約5095万件) の内訳及び統合状況の推移( 推計)
イ マイクロフィルムで管理されている約1466万件の年金記録
年金記録のオンライン化等の過程において、マイクロフィルムで管理することと
された厚生年金保険喪失台帳等の記録が約1466万件存在することが判明した。
社会保険庁は、約1466万件のうち既にオンラインシステムに収録済みの記録を除
いた記録について、磁気媒体化を行い名寄せを行った。その結果、記録が結び付く
可能性がある約68万人に対し確認の文書を発送し、21年5月時点で、このうち約35万
人については本人の記録であると確認できたとしている。
したがって、社会保険庁は、名寄せにより氏名等が一致しなかった年金記録等残
る記録について、統合作業を早期に終結させるための方策を検討する必要がある。
ウ オンラインシステム上の年金記録と厚生年金保険の被保険者名簿等の記録約8. 5億
件との突合せ
厚生年金保険及び国民年金に係る年金記録について、社会保険庁が実施したサン
プル調査の結果、被保険者名簿等の記録とオンラインシステム上の記録が一致しな
いものが見受けられた。厚生労働省は、この結果を踏まえ、紙台帳等の記録約8. 5億
件を電子画像化して検索機能を備えた年金情報総合管理・照合システムを整備した
上で、オンラインシステム上の記録との突合せを22年度から行うこととしており、 1 0 1 0
3 1 0
1 6 1 6 1 2 4 0
7 7 4 1 1 0 0
5 3 3 1 1 6 2 2 4 4 5
5 0 9 5
0 % 2 0 % 4 0 % 6 0 % 8 0 % 1 0 0 % 2 1年 3月3 1日公表
1 9年 1 2月1 1日公 表
1 8年 6月 における 未 統 合年金記録
単位:万件 基礎年金番号と し て付番し た記録
(平成9年1月)
約1億0156万件
基礎年金番号に統合さ れた記録
(9年1月∼18年6月)
約1億5千万件
未統合の記録
(18年6月)
約5095万件 オ ン ラ イ ン 上 の 年 金 記 録 約 3 億 件
名寄せによ り 基礎年金番号と 結びつく可能性がある 記録
死亡が判明し た 者等の記録 解明作業が進展中の記録
必要となる経費は1900億円から2300億円であると試算している。そして、社会保険
庁は、年金情報総合管理・照合システムの開発経費として20、21両年度に予算額計
66億円を計上している。
今後も、同システムの開発及び運用並びに作業人員の配置等に多額の経費が発生
することが見込まれている。したがって、社会保険庁は、その突合せの作業内容が
正確性を確保しつつ経済的かつ効率的なものとなるよう、システムの開発に慎重を
期し、かつ、その運用後も定期的にその実施方法及び結果についての検証を行い、
随時、人員配置、作業方法等の見直しを行っていく必要がある。
エ 年金記録相談等の実施状況
( ア) 社会保険事務所等の相談窓口における年金記録の確認件数は、18年8月から20年
6月までの累計で約1165万件となっていた。そして、相談窓口で年金記録が判明し
なかったため照会申出書により調査の申出を受付したものなどは約112万件であっ
た。この約112万件のうち、基礎年金番号の年金記録に収録されていなかった年金
記録が判明するなどしたものは約28万件であった。
また、社会保険庁が委託により実施している年金記録電話相談等の平均応答率
は、「ねんきんダイヤル」で38. 8%、「ねんきん特別便専用ダイヤル」で68. 5%と
なっている。そして、両ダイヤルについては、被保険者等の年金記録電話相談等
の需要に対して十分な対応ができていない期間が生じていると認められる。
したがって、社会保険庁は、その実施に当たっては、被保険者等の年金記録電
話相談等に対する需要を的確に予測・分析するなどした上で、オペレータを増員
するなどして需要に見合った対応席数を確保することにより、応答率の向上に一
層努める必要がある。
( イ) 社会保険事務所等における年金記録相談において判明した年金記録について、
その基礎年金番号への統合等の処理が適切に行われていなかったため、本来給付
されるべきであった年金額が適正に支給されないなどしている事態が見受けられ
た。
これらについては、社会保険事務所等は、被保険者等から氏名変更等に係る届
出が無い場合にはこれを提出するよう勧奨したり、被保険者等からの届出が無く
とも手帳番号の年金記録を基礎年金番号に統合するための処理を行ったりなどし
年金給付額が増加すると見込まれる年金受給者については、社会保険庁は、当該
年金給付額が早期に支給されるよう、年金の再裁定(当初の年金支給開始の際に
行った裁定の変更をいう。以下同じ。)等の処理の迅速化に更に努める必要がある。
オ 年金記録の不適正なそ及訂正処理
.
総務大臣が厚生年金保険に関し20年2月までにあっせんを行った事案の中に、合理
的な理由が認められないとされた年金記録のそ及訂正の事案が16件見受けられた。 .
そ及訂正に社会保険事務所等の職員の関与を疑わせる事案も20年9月に公表された。
そこで、社会保険庁は、不適正なそ及訂正処理の可能性があるとして抽出した約 .
6万9千件のうち年金受給者に係る約2万件について、20年10月から戸別訪問を開始し、
21年3月末までにおおむね終了した。その結果は、同庁職員の関与を疑わせる旨の回
答が1, 335件あり、このうち211件は職員が特定できるなどとなっている。社会保険
庁は、不適正なそ及訂正処理への職員の関与について調査を行っており、21年7月及 .
び9月に追加調査等の結果が公表され、職員が関与した不適正なそ及訂正事案が、2 .
0年9月公表の1件のほか、25件確認されたとしている。
したがって、社会保険庁は、不適正なそ及訂正処理が行われたとされる者等の迅 .
速な救済を図るため、対象者が役員(事業主を含む。)以外である場合など一定の基
準に該当する事案等については、正確性を確保した上で被害者救済のための処理を
迅速に行う必要がある。そして、今後同様の事態が生じないよう、事業主等に対す
る制度の趣旨についての啓発活動や、被保険者等が自分の年金記録を容易に確認で
きるための方策を執ることなど、再発防止に向けた処置を検討する必要がある。ま
た、標準報酬月額等の不適正なそ及訂正問題については、職員の関与等、事実関係 .
の調査を引き続き行い、その調査結果を明らかにする必要がある。
カ 再裁定等の実施状況
年金受給者について未統合の年金記録のあることが新たに判明し、基礎年金番号
に統合されたときは、社会保険業務センターにおいて再裁定を行う必要がある。社
会保険事務所等から同センターへの再裁定進達件数の増加や「厚生年金保険の保険
給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律」(平成19年法律第111号。
以下「時効特例法」という。)に基づく事務処理の増加等により、再裁定の申出から
年金の支給決定までに要する期間は長期化している。そこで、同センターは当分の
処理の促進を図ることとしている。
したがって、社会保険庁は、引き続き未処理案件の処理促進に努めるとともに、
再裁定案件の受付及び処理状況等を把握した上で、効果的な人員配置を行うなど一
層の処理促進のための方策を検討する必要がある。
キ 年金受給者等に対する特例的救済施策とその実施状況
多数の年金記録が訂正・回復されたことに伴い、多額の年金が消滅時効にかかる
など年金受給者等の不利益となる事態が多数発生したことから、このような年金受
給者等を特例的に救済するための時効特例法、「厚生年金保険の保険給付及び保険料
の納付の特例等に関する法律」(平成19年法律第131号。以下「厚年特例法」とい
う。)等が制定されている。
( ア) 時効特例法の対象者には、支給決定金額が多額の高齢者も見受けられ、適切な
時期に適切な額の給付を受けることができなかったと認められる者が見受けられ
た。
したがって、社会保険庁は、今後このような事態が発生することを防止するた
めに、事業主に対する制度の趣旨についての啓発活動や、被保険者等が自分の年
金記録を容易に確認できるための方策を執る必要がある。
( イ) 厚年特例法に基づく特例納付保険料の額は、21年5月現在5億5625万余円で、う
ち2億5410万余円が既に納付されている。特例納付保険料について対象事業主等が
納付に応じない場合等には、国が特例納付保険料相当額を負担する場合がある。
したがって、社会保険庁は、対象事業主等に対し適切に文書及び電話による納
付勧奨を行っていく必要がある。
( 2) 年金記録問題への対応に係る契約の内容、予定価格の算定、履行及びその確認等の
状況
本院は、社会保険庁が19年度に契約を締結した220契約(支出済額計91億8510万余
円)及び20年度に契約を締結して20年10月31日までに支払を行った267契約(支出済額
計135億0542万余円)について検査を実施した。
年金記録問題への対応については、各種の取組に要する経費として21年度予算にお
いても当初予算額283億余円、補正予算額518億余円が措置されており、今後も多額の
経費が投入されることが予想される。
約担当部署は、①調達要求部署からの調達要求について、調達理由書、業務仕様書等
により業務の必要性・妥当性を審査するなどして、調達の適正化を図り、②予定価格
を適正に算定し、③競争性のある適正な契約手続により契約を締結し、④業務の履行
状況を適正に確認し、支払行為を適正に行うことはもとより、⑤業務の効果を的確に
判断することが必要である。
さらには、これらについては、現在実施している外部の有識者等による事前又は事
後の審査を更に厳正に実施することにより、年金記録問題への対応に係る予算の適切
な執行に努める必要がある。
ア 随意契約の締結
19年度に随意契約により締結された電話相談業務等10契約(支出済額計55億9430万
余円)は、契約書の作成を行わないまま委託業務を開始し、その後に契約書の作成を
行っており、会計法上適正を欠いているものと認められる。
イ 契約の履行及びその確認の実施状況
給付の完了の確認の検査は、契約担当官等の補助者である本庁経理課等の職員が
検査職員として行うこととされているのに、実際は、調達要求部署の担当職員の確
認をもって検査調書を作成していた。会計実地検査において上記の事態が見受けら
れたので、社会保険庁は、21年6月15日以降、実際に直接給付の完了を確認する調達
要求部署の担当職員を補助者として任命することとした。
ウ 年金記録電話相談業務等に係る契約の履行の確認の状況
19、20両年度の電話相談業務に係る契約については、業務従事者の業務実施時間
数を確認できる根拠資料を提出することなどが仕様書等において明示されていなか
った。このため、契約の履行確認の際に、支払請求の対象となる業務の実施状況の
確認を行うことができず、適切とは認められない事態が見受けられた。
このうち、19年度の「ねんきんあんしんダイヤル」に係る一部の契約には、業務
実施時間数に業務を実施していない休憩時間数が含まれていたが、休憩時間は支払
請求の対象から除外すべきであったと思料される。
したがって、社会保険庁は、上記のアからウの各事態について、今後、同様な事態
が生じないよう再発防止に努める必要がある。
( 3) 年金記録問題の再発防止に向けた体制整備の状況
録問題への対応、国民サービスの向上、内部統制の仕組みの構築と職員の意識改革の
推進等として再編したとしている。
そして、内部統制の仕組みの構築等により、不正行為等の不適正な事務処理等の再
発を防止したり、内部監査による不適正な事務処理等の早期発見及び是正に努めたり
する必要がある。
また、22年1月に成立する予定の日本年金機構における内部統制システムの構築につ
いてみると、「国民の意見を反映しつつサービスの質の向上を図るとともに、効率的か
つ公正・透明な事業運営を行う。」ことなどの基本的視点に基づき、かつ会社法や金融
商品取引法に基づく民間企業の取組を参考にして、基本方針を定めているとしている。
この基本方針において、柱として位置付けられた7事項における具体的な取組内容は、
いずれも社会保険庁におけるこれまでの年金記録問題への対応で明らかになった課題
等について、改善を図るものであるとしている。
したがって、社会保険庁は、このような枠組みの中で、各種取組に対する評価を適
切に実施して、解決すべき課題を遺漏なく洗い出すなどすることにより、年金記録問
題の再発防止に努める必要がある。
ア 不適正な事務処理等の防止に係る取組
( ア) 不適正な事務処理等の防止に係る通知の発出
社会保険庁は、17年10月以降、不適正な事務処理等の防止に係る各種通知を発
出している。これらは、業務改革プログラムの内部統制の仕組みの構築と職員の
意識改革の推進等に係る具体的な取組として、不適正な事務処理等の再発を防止
して年金記録の正確性確保を図ることなどを目的としたものであるとしている。
( イ) 不正行為の再発等
社会保険庁が18年3月に不正事故防止のための点検事項等に係る通知を発した後
も、年金記録の正確性に影響を及ぼす保険料の横領の不正行為が発生している。
イ 内部監査の実施等による不適正な事務処理等の再発防止に係る取組
社会保険庁が実施する内部監査には、業務監察、会計監査及び自治監査があり、
18年10月以降、業務改革プログラム等における監査部門の機能強化を図っている。
( ア) 内部監査の実施方針等
業務監察では、年金記録の正確性確保に関するものとして、20年度では適正検
会計経理の適正性を確保する観点として、18、19、20各年度において、内部牽制
体制が実効性を確保できる取組みとなっているか実地に検証を行うことなどとな
っている。
( イ) 内部監査の実施状況
業務監察及び会計監査では、年金記録問題への対応に追われた19年度には実施
箇所数が大幅に少なくなっている。また、不正事故、現金亡失等の防止の観点か
ら、事前に通告をしない業務監察及び会計監査も実施しており、近年、業務監察
及び会計監査が実施されていない社会保険事務所等から実施対象を選定するなど
している。
( ウ) 内部監査の実施結果
業務監察では、実施結果を①是正指示事項、②指摘事項、③指導事項に区分し
ている。これらの事項は、業務監察対象の地方社会保険事務局長等に対し文書で
通知されるとともに、是正又は改善のための措置及びその結果について書面で改
善報告書の提出を求められることとなっている。一方、会計監査では、是正等を
要すると認めた事項について、会計監査対象の地方社会保険事務局長等に対し文
書で通知されるとともに、是正等のための措置及びその結果について書面で改善
報告書の提出を求められることとなっている。
18、19、20各年度における本庁及びブロック局が実施した業務監察及び会計監
査の実施結果についてみると、20年度の業務監察で適正検査により重点を置いた
ことなどから、指摘件数の総数が大幅に増加している。
( エ) 内部監査の実施結果の周知
業務監察の実施結果の概要は、全職員が庁内LANで閲覧できるようになって
いる。一方、会計監査の実施結果の概要は、会計担当職員のみが庁内LANで閲
覧できるようになっている。
ウ 社会保険庁の基本的姿勢や組織上の問題に対応するための組織改革等
社会保険庁は、21年1月の業務改革プログラムの改定において、「内部統制の仕組
みの構築と職員の意識改革の推進」について、民間企業等における内部統制の考え
方を踏まえながら、社会保険庁における内部統制の強化に取り組むために、金融庁
企業会計審議会による内部統制の基本的要素ごとに、これまでに実施した各種の取
これらの取組のうち、①「社会保険業務処理マニュアルの運用開始」及び「監査
部門の機能強化」は、独自の判断による事務処理に基因する不適正な事務処理の再
発防止を図るものであり、②「リスクアセスメント調査の実施」は、業務運営上の
リスクを網羅的に把握・分析・評価して、その発生や対応について管理する仕組み
を構築するために、業務運営上のリスクを洗い出すものであり、③「社会保険オン
ラインシステムの刷新」は、不適正処理の防止及び早期発見が可能となるチェック
機能の整備を含むもので、適正な事務処理を確保するものであるとしている。
また、社会保険庁は、年金記録の正確性を確保するために、「ねんきん定期便の発
送」や「インターネットによる年金記録照会」により年金受給者、被保険者等本人
が年金記録を確認する仕組みの整備を進めているとしている。
エ 社会保険庁の廃止及び日本年金機構の設立
( ア) 日本年金機構の当面の業務運営に関する基本計画
社会保険庁は22年1月に廃止されることが予定されており、厚生年金保険、国民
年金両事業は、日本年金機構が厚生労働大臣の監督の下にその業務運営を担うこ
とが予定されている。
20年7月に閣議決定された基本計画によれば、①組織ガバナンスの確立に関する
内部統制の仕組みの構築については「リスクアセスメント調査、業務処理マニュ
アルの整備を進めることや、内部統制を推進する組織体制を整備するなど、内部
統制の強化に早急に取り組む」、②監査体制等の整備については「理事長に直結し
た内部監査部門を設け」、「会計監査人による会計監査のみならず、業務について
も外部監査を活用する」、③固定的な三層構造を一掃することについては「本部で
一括採用を行うとともに、地方の幹部人事も本部で行う」、④年金記録問題への対
応については「一定期間、一定程度の人員・体制がなお必要となる場合も、まず
は既定の人員の枠内で最大限の工夫を行うものとし、それでも対応が困難である
場合でも、できる限り、外部委託や有期雇用の活用などにより対応する」、「いか
なる場合でも、機構の他の業務に重大な支障が生じないよう、厚生労働省が責任
を持って適切な対応策を講ずる」ことなどとされている。
( イ) 日本年金機構における内部統制システムの構築等
日本年金機構における内部統制システムの構築の基本方針において、①コンプ
性の確保、④適切な外部委託管理、⑤情報の適切な管理・活用、⑥業務運営及び
内部統制の実効的な監視及び改善、⑦ITへの適切な対応の7事項が柱として位置
付けられている。
年金記録問題に対応するための各種取組については、今後も、社会保険庁(22年1月1
日以降は同日に成立する予定の日本年金機構。)において適切に実施されることが必要で
ある。
会計検査院としては、今後とも、年金記録に対する国民の信頼の回復を図るなどのた
めに社会保険庁が実施している各種取組が適切に実施されているかについて、多角的な